由木の小さな歴史の痕跡を探しておさんぽ

記録の途中

記録の途中 #4 あの博物館から始まったこと | 東京都八王子市由木地域

先日、「自分の好きな博物館とはどんな場所だろう」と、あらためて考える機会がありました。

考えてみると、その答えは、最近の活動や、今いる場所よりもずっと前に、すでにあったように思います。

思い返せば、子どもの頃、何度も足を運んだ、あの博物館で感じていた時間が、いまの自分の感覚につながっているのかもしれません。

▲パルテノン多摩ミュージアム


博物館は、展示を見るためだけの場所ではありません。
その土地に流れてきた時間や、人々の営みの気配を、そっと感じられる場所です。

大きな出来事や年表のような歴史だけでなく、日々の暮らしのなかにあった、小さな記憶や名もなき出来事にも目を向けて、「ここで生きてきた人がいた」という事実を、静かに伝えてくれるところに、心を惹かれます。

▲日野市新選組ふるさと歴史館

その感覚の原点は、子どもの頃によく通っていた古河歴史博物館にありました。

当時、第二・第四土曜日は学校が休みで、それに合わせて、博物館も小中学生の入館料が無料になっていました。
私は学校の友人と、その日を楽しみにしながら、お弁当を持って毎月のように博物館へ足を運んでいました。

自分たちが暮らしている町の歴史。
古文書や絵巻。
かつて絹産業で使われていた古い機器。
地元に伝わる伝説や昔話をもとにした映像。

▲龍生寺阿弥陀堂の地蔵群(堀之内)

学校の歴史の授業では、決して詳しく触れないこと。
大人たちも、あまり語らないこと。
それでも、確かにここにあったものたちを、私は夢中になって見ていました。

過去と今のあいだに立ち、行き来できる小さな入口のような場所。
あの博物館は、私にとって、タイムホールのような存在だったのだと思います。

▲小山内裏公園で出土した瓦:於 東京都公園協会主催さとやまブックファースト(八王子市南大沢図書館、東京都埋蔵文化財センター協力)


いま、地域の記録に関わるようになり、あらためて「博物館とは何か」を考えることが増えました。

地域における博物館は、その土地に寄り添いながら調査し、保存し、研究を重ね、そこで得られた知見を、地域の人々へと還していく存在であってほしいと感じています。

▲南大沢輪舞歩道橋から望む多摩ニュータウンの団地群

私が活動の拠点としている由木地域も、多摩ニュータウン開発の影響を強く受けてきた場所です。
けれど、多摩ニュータウンとして語られる以前から、人々の暮らしや信仰、風景が、確かに積み重なってきました。

開発によって更新された街並みのなかには、変わらず残るものもあれば、かたちを変えたもの、そして、いつのまにか語られなくなった記憶もあります。

▲谷戸名や旧地名について筆者が印をつけた地図(フュージョン長池発行「八王子市由木地区公園マップ」)

博物館は、そうした断片を拾い集め、土地の時間の重なりとして、丁寧に示してくれる場であってほしい。

学校教育や、大きな歴史の枠組みでは掬いきれない、地域の身近な出来事や営みにも、そっと光を当てる場所であってほしいと思います。

▲東京都埋蔵文化財センターにて学芸員の方に解説をいただいたときの様子(由木ぶら散歩の会活動記録写真より)

博物館が、外から価値を与える場所ではなく、そこに暮らす人自身が、
「自分たちの地域には、こんな歴史があったのだ」
と気づくきっかけになること。

あの博物館で感じていた時間は、かたちを変えながら、いまの自分の記録の中にも、静かにつながっているように思います。

いまは、そんなことを考えながら、また、記録を続けています。

写真・文:しみずことみ

▲絹の道・道了堂跡参道(鑓水)

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