写真・文:しみずことみ
取材協力:大塚八幡神社
台風の影響下、祭りの決行
9月1日。
台風10号による影響で天候が心配されるなか、大塚八幡神社の例大祭は予定通り斎行されました。
朝から雨が降り続く空模様にもかかわらず、神事と御霊遷し(みたまうつし)は厳かに行われ、神様は神輿へと移されました。

お囃子と獅子舞の奉納
午後になると、いよいよ神輿と和太鼓の巡行が始まります。
お囃子と子ども神輿は雨のため中止となりましたが、和太鼓は子どもたちや地域の皆さんが綱を引き、大人神輿は周辺の講中からの応援も得て力強く担がれました。

各世代から担ぎ手が出て活気ある掛け声が境内に響く

雨に打たれながら進む神輿
巡行が始まった午後は、少し晴れ間が見えた時間もありましたが、次第に天候は悪化し、一時は本降りの雨となりました。
それでも神輿は進み続け、地元の担ぎ手たちに加えて、由木周辺や多摩市・日野市から集まった応援の皆さんが肩を合わせ、びしょ濡れになりながらも声を張り上げていました。
特に印象的だったのは、多摩市・武蔵国一之宮 小野神社の皆さんです。
古くから伝統を知る方も多く、熱のこもった掛け声で神輿の動きをリードしていました。
「昔は小野神社と関戸熊野神社が祭りの日に道路上で鉢合わせて、威勢よくぶつかり合ったものだよ」
関戸熊野神社の氏子さんは、懐かしそうに当時を振り返って話してくださいました。
今では人手不足などの事情から日程をずらし、互いに応援し合う形が主流になったそうですが、かつての賑わいを感じさせるエピソードでした。

強まる雨の中でも、神輿は進む

担ぎ手は時々交代し、互いに協力する空気がまた気持ちがいい
和太鼓と子どもたち——地域の絆
和太鼓は、元気な子どもたちの掛け声に導かれ、雨の中を進んでいきました。
大人たちが見守る中、子どもたちが引く綱はまるで地域の未来を象徴しているかのようでした。

和太鼓を引く子どもたち。濡れた道路も楽しそうに歩く
夕方、空に現れた希望の色
夕方になると、雨は次第に弱まり、空の向こうには晴れ間が広がり始めました。
台風の雲が少しずつ遠ざかると、街はやわらかな光に包まれ、担ぎ手たちの顔には安堵と高揚が入り混じった表情が浮かびます。
「神様も、今日一日をよくやったと微笑んでいるのかもしれない」
誰かがそう口にした。
それは、宵宮の日に真紅に染まった空が告げていた「狼狽えるな、明日は問題ない」というあの言葉を思い出させる光景だった。

夕刻、空が明るくなり始めると、空気もどこか和らいだ

各地から集まった講中。法被に刻まれた地元の誇り
夜に向けて——終わりではない一日
夕方以降、巡行は最後の盛り上がりへと向かいました。
神輿は夜まで練り歩き、地域に賑わいをもたらしましたが、例大祭はそれで終わりではありません。
担ぎ手たちの中には、このあとも他地域のお祭りへ応援に向かう方もいらっしゃいました。
「来週からは武蔵の秋祭りの季節が始まります」
そう語る氏子の言葉どおり、由木と多摩地域のお祭りは、これからも連なり続けていくのです。

最後まで担ぎ手たちは力強く神輿を担ぎ続ける

写真・文:しみずことみ
取材協力:大塚八幡神社
2024年 大塚八幡神社例大祭 神輿巡行の記録記事一覧
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