写真・文:しみずことみ
まだよく知らない「由木」の向こう側へ
自分の住んでいる地域を知りたい。
そんな気持ちだけが先立っていた、2022年。
由木という地名すらまだよく知らず、ただがむしゃらに近くの神社や石仏を訪ね歩き、写真を撮り、メモを残していました。その道すがら立ち寄ったのが、この関戸熊野神社です。

堂々とした鳥居。神社は道の突き当たりにある(2022.11.04 しみず撮影)
神社の入り口は、まさに道の終点。
ニュータウン開発によって周囲はすっかり新しい住宅地に生まれ変わっていましたが、この神社だけは場所を動かさず、静かに佇んでいるように見えました。
少し危ない場所にすら思えたその立地は、「ここだけは動かしたくなかった」という土地の人の思いを映し出しているようにも感じられました。

階段の奥に社殿。秋の色づきが訪れる(2022.11.04 しみず撮影)
ふと訪れた、あたたかな交流
取材中、ひとりの年配の女性が声をかけてくださいました。
南大沢から自転車でやってきたこと、何もわからないまま写真を撮っていること、いつかこの地域をもっと好きになりたいと思っていること——。
そんな拙い話を、彼女は優しくうなずきながら聞いてくれました。
そして最後に、
「いつか、そうなったら良いわね」と、たったひと言。
それは、今も忘れられない温かい言葉です。

(2022.11.04 しみず撮影)
その後も地域のことをいろいろ話してくださったのですが、正直なところ、当時の私には内容のほとんどが理解できませんでした。
でも、不思議なことに、そのときのやりとりだけは今でもはっきりと覚えています。
いつかもう一度あの女性と出会い、あの続きを聞くことができたら——。
そう思いながら、今日もまた、この地域の記録を続けています。

(2022.11.04 しみず撮影)
写真・文:しみずことみ
後から知った、地域のつながりのつながりを想う
2024年9月10日追記:写真・文 しみずことみ

(2022.11.04 しみず撮影)
あれから時がたち、私は由木の記録活動を続ける中、大塚八幡神社の例大祭の取材をさせていただく機会がありました。
その際、関戸熊野神社の担ぎ手の方々が応援に来ているのを目にし、「あの時訪れた神社と、こんなふうにつながっているんだ」と、改めて地域同士の絆を実感したのです。
初めて訪れたあの日は、まだ何も知らなかった場所。
けれど今は、少しずつこの土地が自分にとっても馴染みある場所になりつつあります。

大塚八幡神社例大祭・巡行の様子。近隣の様々な講中が応援に駆けつける様子。(2024.09.01 しみず撮影)
2024年9月10日追記:写真・文 しみずことみ
この記事は「小さな寄り道 — 由木を知る、地域の外のまなざし」シリーズのひとつです。
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