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地域のまつりと祈り

鑓水諏訪神社 春の大祭 2025──「子の神さま」と絹の道の記憶をたどる春のひととき | 東京都八王子市鑓水

写真・文:しみずことみ

「子の神さま」として古くから鑓水の人々に親しまれてきた鑓水諏訪神社。例年、5月の連休中に行われる春の大祭は、地域に春を告げる大切な行事です。2025年の今年も、神楽や獅子舞、神輿などの賑やかな催しが行われ、多くの人々が集いました。
その一日を、地域のまつりと祈りの記録としてここに残します。

祭りの日、賑わう境内

2025年5月4日。気温28度という初夏のような陽気の中、鑓水諏訪神社の春の大祭は開催されました。
決して広くはない境内は、思った以上の人出で賑わい、地域の方々や訪問者が入り交じり、どこか昔ながらの「集まる場」のような空気に包まれていました。


山車とお囃子──前日の熱気

前日の5月3日には、お囃子の山車巡行が行われ、ぶら散歩の会の仲間たちとともに見に行きました。
実際は軽トラックに山車を乗せたスタイルでしたが、道路を走るその姿とお囃子の音に、つい夢中で全速力で追いかけました。
大人になって、こんなに全速力で走ることもあまりありません。まるで、神輿を追って町内中を駆け回る子供のようで、良い思い出となりました。


子どもたちの神輿と、地域のつながり

この日は、子ども神輿も用意されていました。当日は境内を一周する形になりましたが、それでも子どもたちの元気な掛け声と笑顔があふれました。
印象的だったのは、担ぎ手を地域内外問わず広く募っていたこと。「半被を貸すので、ぜひ担いでください!」という呼びかけに、外から訪れた人たちも気軽に参加し、地域のまつりが開かれたものであることを感じさせました。
町内巡行は前日の軽トラックでのものに換えたようです。鑓水町会の範囲は広く、高低差もあるので、この暑さの中で、子どもたちが神輿を担いで回るとなると、1日がかりとなり、体調不良者が出ることも予想されます。そのため、この判断と対応は現代においては妥当だと、改めて感じました。


獅子舞、そして赤い鳥の舞

神楽舞台では、獅子舞が奉納され、見守る人々を楽しませていました。息子も頭を噛んでもらい、元気と幸運を授かりました。その後に登場した、赤い装束の鳥のような人物による舞は、私にとって初めて目にするものでした。
その意味や由来はまだわかりませんが、地域の奥深い信仰と祭礼の一端に触れた気がしました。


鑓水という土地と、諏訪神社のつながり

鑓水は、かつて「絹の道」と呼ばれた古道が通る、人と物が盛んに行き交った土地です。
この神社は、かつての鑓水村の鎮守であり、江戸時代からの歴史を持つ地域の中心的存在です。現在は「諏訪神社」という名で八王子市鑓水に位置していますが、地域の人々の間では古くから「子の権現(ねのごんげん)」とも呼ばれてきました。
この「子の権現」は、特に養蚕との関わりが深く、養蚕神のとしての信仰が篤いとされます。
時代が移り、農村から住宅地へと風景が変わっても、神楽や獅子舞、神輿が奉納される春の大祭は、今もなお人々をつなぎ、地域の記憶を今に伝えています。
こうして毎年行われる祭りの営みそのものが、地域と神社の深い絆を象徴しているように感じました。

[写真解説]静かな森に包まれる鑓水諏訪神社。公式には「諏訪神社」だが、地域では養蚕神・子の権現としての信仰も根強く残る。今もなお、木々のざわめきとともに、祈りの場として息づいている。( 別日取材時に撮影 )

[写真解説]諏訪神社の参道に並ぶ石灯籠。年月を重ねた石肌と刻まれた文字が、この場所に寄せられてきた祈りの深さを静かに物語っている。( 別日取材時に撮影 )


おわりに

神事のひととき、地域の人々の賑わい、そして獅子舞や赤い鳥による祝福の舞。祭りの空気に包まれた一日は、鑓水という土地とそこに暮らす人々の歴史を静かに物語っていました。
私にとっても、地域のそばでこのような記録を続けていくことの意味をあらためて感じる一日となりました。
来年も、再来年も。鑓水諏訪神社の春の大祭が、地域の今と未来を静かに見守り続けていくことを心から願います。

写真・文:しみずことみ


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