写真・文:しみずことみ
長沼公園へ向かう旧街道の途中に、ひっそりとした辻があります。
人の気配は遠く、風の音ばかりが抜けていく場所です。
その片隅に、小さな庚申塚が佇んでいました。
古い屋根をかけられ、静かにそこに立っている石碑。
刻まれたのは、六本の腕をもつ青面金剛の姿です。

そっと近づくと、脇の面には「講中」の文字が読めました。
むかし、村の人たちが集まり、この地を守ろうと願った名残。
旅人が歩いた道でもあり、日々の暮らしの延長にあった祈りでもあります。
いまは車が通る音も届かないほど静かな辻なのに、
石のまわりには花が添えられ、掃いたばかりのような気配もありました。
誰かが変わらず手を合わせているのだと思うと、
この場所が、今もそっと生き続けているように感じます。
道のそばで、淡々と季節を重ねる庚申塚。
立ち止まる時間は短くても、
帰り道の足どりに、ほんの少しあたたかさが残りました。

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