由木の小さな歴史の痕跡を探しておさんぽ

動植物フィールドノート

ケヤキ | 富士見台公園 | 東京都八王子市下柚木

観察日2025年11月12日
場所富士見台公園
東京都八王子市下柚木905−3
植物名ケヤキ
分類ニレ科 ケヤキ属(落葉高木)

観察の状況

自然観察会の最初に立ち寄ったのは、富士見台公園の大きなケヤキだった。
枝ぶりが空に広がっていて、秋の光を含んだ細長い葉が揺れていた。
黄色と茶色が混じり合う葉の影が、地面にふわりと落ちていた。

この日の案内人で長池公園 園長の小林健人さんが「樹皮のすき間には、冬を越す虫たちが潜むことがある」と話していた。
その一言をきっかけに、私は幹の表面に目を近づけた。

特徴と描写

幹には、薄く浮いた樹皮のかけらがいくつもあった。
手を触れたわけではないのに、
その裏側に少し湿った空気が溜まっているような気がした。

ごくわずかな暗がりの中に、
虫の卵や幼虫がひっそりと春を待っている。
その虫をねらうクモも、同じ場所を選ぶのだろう。
小さな影が暮らしているはずの空間を想像しながら、
私はそっと樹皮の模様をたどった。

ケヤキの幹は、遠くから見るとただの模様にしか見えない。
でも目を近づけると、その模様は
季節の営みをいくつも重ねた痕跡のように思えてきた。
灰色と赤褐色と苔の緑が、静かに混ざり合っている。

頭上の葉は風に揺れ、薄く透けるように明るかった。
幹に顔を寄せていると、
同じ木の中にまったく別の時間が流れているように感じた。

記録者の印象・気づき

幹を見ているだけなのに、その裏側にある世界を想像してしまう。
虫やクモだけでなく、冬の鳥たちもここを訪れる。
枝ではなく、幹にぴたりと張りついて動く鳥の姿を思い浮かべると、
ケヤキはただの木ではなく、「縦に伸びたひとつの生態系」のようだった。

私は実際に虫を見たわけではない。
クモや鳥の姿もこのとき目にしたわけではない。
それでも、樹皮のすき間にそっと触れた視線だけで、
そこに何層もの気配が重なっていることだけは、はっきりと伝わってきた。

木の外側と内側。
葉が揺れる光と、幹のすき間に潜む影。
そのどちらも、このケヤキを形づくる時間なのだと思う。

ひとつの幹の前で立ち止まるだけで、
自分の視界が少しだけ深くなるような感覚が残った。

補足メモ

ケヤキは落葉高木で、樹皮が薄くはがれる性質がある。
この「はがれかけの部分」が、越冬昆虫やクモのすみかになり、
冬は鳥たちがそのすき間を探して歩く。
幹に刻まれた模様は、季節の積み重なりそのもの。

写真・記録:しみずことみ


※今回は自然観察会 「秋を探しに行こう」の取材の中での気づきをフィールドノートにまとめました。
案内人:小林健人さん(NPOフュージョン長池/長池公園園長)
主催:高齢者あんしん相談センター由木

▼当日の記録記事はこちら
秋を探しに行こう──富士見台公園で出会った木と土の時間 | 長池公園園長 小林健人さん


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